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1,売買トラブル
不動産(土地・建物)の売買は,金額も高額です。
特にマイホームとして購入し,そこに居住する場合には人生を左右する大きな買い物となりますので,購入する際には,十分に吟味する必要があります。
多くの場合,不動産の売買には仲介業者(もしくは販売業者)として,不動産業者が関与しています。
不動産業者は,宅地建物取引業法(宅建業法)により,不動産を仲介・販売する場合には,さまざまな義務を負っています。
(1)重要事項説明書
具体的に,よく問題となるものとしては,重要事項の説明があげられます。
不動産業者には,売買契約書とは別に,重要事項説明書を作成し,宅地建物取引主任者がその内容を読み上げて説明する義務があります。
重要事項説明書には,当該物件に関する詳細な情報(法的な制約や物件の瑕疵,インフラ等)を記載する義務がありますので,物件の購入者は,重要事項説明書の内容を確認し,当該物件のマイナス面も考慮の上,購入するかどうか判断し,売買契約書にサインします。
これは,大手であろうと,町の小さな不動産屋であろうと,すべての不動産業者が負う義務です。重要事項説明書を渡さなかったり,渡しても「あとでよく読んでおいてください」とその場で読み上げて説明しない業者は,宅建業法を守らないいい加減な業者ですので,気をつけてください。
そして,重要事項説明書の内容を確認し,納得した上で購入した場合でも,重要事項説明書に書いていなかった問題点があることが発覚し,トラブルになることがあります。
重要事項説明書への記載を義務付けられている内容を記載していなかった場合には,売買契約の解除事由となりますますので,売買契約を解除することができます。
ただし,気にくわない,マイナスと感じる事項はなんでもかんでも重要事項説明書に記載義務があるわけではありませんので,必ずしも売買契約を解除できるわけではありませんので,重要事項説明書だけでなく,しっかりと当該物件そのものも確認して購入を決断しましょう。
(2)手付
不動産の売買契約の場合,手付解除といい,買主は手付金を放棄することにより(売主は手付金の倍額を返金することにより),一方的に売買契約を解除することができます。
手付金は,売買契約時に支払われ,大体売買代金10%が相場です。
重要事項説明書に記載すべき内容ではないが,気になる問題が発覚し,購入するのを取りやめたいとか,他にもっといい物件が見つかったので,購入を取りやめたいとかいう場合には,手付として支払ったお金は返ってきませんが,売買契約を解除することができるのです(手付解除といいます)。
もっとも,いつでも解除できるわけではなく,相手方が「売買契約の履行に着手するまで」という制約があります。
例えば,「売主が買主の要望に従ってリフォームして引き渡す」というような場合に,売主がリフォーム工事に取り掛かると,手付を放棄しても契約を解除することはできません。
特にマイホームとして購入し,そこに居住する場合には人生を左右する大きな買い物となりますので,購入する際には,十分に吟味する必要があります。
多くの場合,不動産の売買には仲介業者(もしくは販売業者)として,不動産業者が関与しています。
不動産業者は,宅地建物取引業法(宅建業法)により,不動産を仲介・販売する場合には,さまざまな義務を負っています。
(1)重要事項説明書
具体的に,よく問題となるものとしては,重要事項の説明があげられます。
不動産業者には,売買契約書とは別に,重要事項説明書を作成し,宅地建物取引主任者がその内容を読み上げて説明する義務があります。
重要事項説明書には,当該物件に関する詳細な情報(法的な制約や物件の瑕疵,インフラ等)を記載する義務がありますので,物件の購入者は,重要事項説明書の内容を確認し,当該物件のマイナス面も考慮の上,購入するかどうか判断し,売買契約書にサインします。
これは,大手であろうと,町の小さな不動産屋であろうと,すべての不動産業者が負う義務です。重要事項説明書を渡さなかったり,渡しても「あとでよく読んでおいてください」とその場で読み上げて説明しない業者は,宅建業法を守らないいい加減な業者ですので,気をつけてください。
そして,重要事項説明書の内容を確認し,納得した上で購入した場合でも,重要事項説明書に書いていなかった問題点があることが発覚し,トラブルになることがあります。
重要事項説明書への記載を義務付けられている内容を記載していなかった場合には,売買契約の解除事由となりますますので,売買契約を解除することができます。
ただし,気にくわない,マイナスと感じる事項はなんでもかんでも重要事項説明書に記載義務があるわけではありませんので,必ずしも売買契約を解除できるわけではありませんので,重要事項説明書だけでなく,しっかりと当該物件そのものも確認して購入を決断しましょう。
(2)手付
不動産の売買契約の場合,手付解除といい,買主は手付金を放棄することにより(売主は手付金の倍額を返金することにより),一方的に売買契約を解除することができます。
手付金は,売買契約時に支払われ,大体売買代金10%が相場です。
重要事項説明書に記載すべき内容ではないが,気になる問題が発覚し,購入するのを取りやめたいとか,他にもっといい物件が見つかったので,購入を取りやめたいとかいう場合には,手付として支払ったお金は返ってきませんが,売買契約を解除することができるのです(手付解除といいます)。
もっとも,いつでも解除できるわけではなく,相手方が「売買契約の履行に着手するまで」という制約があります。
例えば,「売主が買主の要望に従ってリフォームして引き渡す」というような場合に,売主がリフォーム工事に取り掛かると,手付を放棄しても契約を解除することはできません。
2,賃貸トラブル
売買契約の場合は,基本的に物件の引き渡しが完了すると,後で気付かなかった瑕疵が見つかったりしない限り,それ以上問題が生じることは少ないです。
しかし,賃貸借の場合,契約が続く限り,賃貸人(大家)と賃借人の関係は続きますので,問題が発生することも多くなります。
(1)修繕・改装に関する問題
(2)賃料に関する問題
しかし,賃貸借の場合,契約が続く限り,賃貸人(大家)と賃借人の関係は続きますので,問題が発生することも多くなります。
(1)修繕・改装に関する問題
① 改装
賃貸借契約の場合,物件には賃借人が居住しますので,賃借人からすると自分が住みやすいように改装したい(キッチンを最新のものにしたい,壁紙を張り替えたい等)と考えるでしょう。
しかし,あくまで,物件の所有者は賃貸人(大家)ですので,賃借人は,賃貸人の承諾なく改装したりできないのが原則です。
賃貸人の承諾なく改装等すると契約の解除事由となります。
② 修繕
では,壊れた部分を修理しないといけない場合はどうでしょうか。
賃貸人は,賃料をもらう代わりに,「物件を使用させる義務」を負います。壊れた物件ではなく,ちゃんとした物件を使用させる義務を負うので,壊れた部分については,賃貸人が賃貸人の費用で修理する義務を負うのです。
ただし,「電球が切れた」とか,「水道のパッキンが壊れた」とかいった小さな修理については,賃借人が賃借人の負担で修理しなければなりません。
また,賃貸人が行うべき大きな修理について,いくら賃貸人に言っても動いてくれない場合には,賃借人が業者等に依頼して修理をしてもらい,その費用を賃貸人に請求することができます。
賃貸借契約の場合,物件には賃借人が居住しますので,賃借人からすると自分が住みやすいように改装したい(キッチンを最新のものにしたい,壁紙を張り替えたい等)と考えるでしょう。
しかし,あくまで,物件の所有者は賃貸人(大家)ですので,賃借人は,賃貸人の承諾なく改装したりできないのが原則です。
賃貸人の承諾なく改装等すると契約の解除事由となります。
② 修繕
では,壊れた部分を修理しないといけない場合はどうでしょうか。
賃貸人は,賃料をもらう代わりに,「物件を使用させる義務」を負います。壊れた物件ではなく,ちゃんとした物件を使用させる義務を負うので,壊れた部分については,賃貸人が賃貸人の費用で修理する義務を負うのです。
ただし,「電球が切れた」とか,「水道のパッキンが壊れた」とかいった小さな修理については,賃借人が賃借人の負担で修理しなければなりません。
また,賃貸人が行うべき大きな修理について,いくら賃貸人に言っても動いてくれない場合には,賃借人が業者等に依頼して修理をしてもらい,その費用を賃貸人に請求することができます。
① 賃料の未払
賃借人が賃料を支払わない場合でも,賃貸人はすぐに契約を解除して追い出すことはできません。
賃借人にとっては,多くの場合,当該物件は生活の本拠(自宅)であり,追い出されると路頭に迷うことになりかねないので,賃借人の保護が重視されているのです。
1度や2度賃料の支払いが遅れただけでは,契約を解除することができず,「信頼関係が破壊される」ような状態になってはじめて契約を解除して立ち退きを求めることができるのです。
具体的には,個々の事例によって異なってきますが,半年分以上滞納したような場合に,契約の解除が認められます。
② 賃料の改定
生活の本拠となる賃貸借契約の場合,契約の更新を繰り返して契約期間が何十年にもなることがあります。
そのような場合でも,契約ですので契約締結時に決定した賃料のままであるのが原則です。
しかし,契約時には何もない土地だったので地価に応じて賃料も安く設定していたが,契約後,近隣に駅ができて開発され,地価が跳ね上がったといった場合にまで,契約時の賃料のままでは不適切です。
反対に,バブル時の高い賃料のままで,地価が暴落してもその当時の賃料のままというのも,賃借人にとっては酷なことです。
そのような場合,話し合いで賃料を変更することになりますが,一方が賃料の改定に応じない場合には,裁判所に申し立てて賃料を変更することもできます(裁判所が,変更前の賃料,経済情勢や地価の変動,近隣相場等を参考に適切な賃料額を決定します)。
(3)明け渡しに関する問題
① 立ち退き
「家賃を滞納されているので退去して欲しい」,「借主が家財道具を残して行方不明なので処分したい」といった場合,所有者である大家であっても,勝手に入口の鍵を交換して追い出したり,残っている家財道具等を処分してはいけません。
まず,「家賃を滞納した」,「借主と連絡がとれない」だけですぐに契約を解除できるわけではありません。賃料の未払の項で書きましたが,「信頼関係が破壊される」程度に滞納額が多くなった,音信不通の期間が長くなった場合に,ようやく契約の解除が認められます。
しかし,契約の解除が認められても,借主には当該物件の「占有権」(当該物件を占有使用してきたという実績を保護する権利,不法占拠であっても認められます)がありますし,家財道具についてはあくまで借主の所有物です。
所有者である大家であっても当該物件を「占有」している借主の承諾なしに立ち入ると,住居侵入となる場合がありますし,所有者である借主の承諾なしに家財道具を処分すると窃盗罪や器物損壊罪となる場合があるのです。
したがって,借主と話し合って自発的に出て行ってもらうか,それでも出ていかない場合には,法的に適切な手続を踏み,裁判所の強制執行手続により立ち退いてもらう必要があります。
② 原状回復
賃貸借契約が終了した場合,借主は,当該物件を「原状に回復」して返還する義務があります。
原状回復」とは,借りた時の状態に戻すことであり,借主が運び入れた家財道具等は全部ひき払わないといけませんし,障子が破れたりしていたら元に戻さないといけません。
しかし,なんでもかんでも借りた時の状態に戻さないといけないわけではなく,通常生活している中でやむを得ない経年劣化等については戻す必要はありません。
例えば,壁紙に子どもが落書きしてしまったような場合は,落書きを消す必要がありますが,長年暮らしたことにより,借りた当時より黄ばんでしまったというような経年変化については回復する必要はありません。
退去時に,経年変化以外の損耗がないにも関わらず,家主が壁紙や畳の張り替えを行い,かかった費用を敷金から差し引いて敷金を一部しか返還しないというようなことがありますが,家主が負担すべき費用であり,借主は敷金全額の返還を求めることができます。
賃借人が賃料を支払わない場合でも,賃貸人はすぐに契約を解除して追い出すことはできません。
賃借人にとっては,多くの場合,当該物件は生活の本拠(自宅)であり,追い出されると路頭に迷うことになりかねないので,賃借人の保護が重視されているのです。
1度や2度賃料の支払いが遅れただけでは,契約を解除することができず,「信頼関係が破壊される」ような状態になってはじめて契約を解除して立ち退きを求めることができるのです。
具体的には,個々の事例によって異なってきますが,半年分以上滞納したような場合に,契約の解除が認められます。
② 賃料の改定
生活の本拠となる賃貸借契約の場合,契約の更新を繰り返して契約期間が何十年にもなることがあります。
そのような場合でも,契約ですので契約締結時に決定した賃料のままであるのが原則です。
しかし,契約時には何もない土地だったので地価に応じて賃料も安く設定していたが,契約後,近隣に駅ができて開発され,地価が跳ね上がったといった場合にまで,契約時の賃料のままでは不適切です。
反対に,バブル時の高い賃料のままで,地価が暴落してもその当時の賃料のままというのも,賃借人にとっては酷なことです。
そのような場合,話し合いで賃料を変更することになりますが,一方が賃料の改定に応じない場合には,裁判所に申し立てて賃料を変更することもできます(裁判所が,変更前の賃料,経済情勢や地価の変動,近隣相場等を参考に適切な賃料額を決定します)。
(3)明け渡しに関する問題
① 立ち退き
「家賃を滞納されているので退去して欲しい」,「借主が家財道具を残して行方不明なので処分したい」といった場合,所有者である大家であっても,勝手に入口の鍵を交換して追い出したり,残っている家財道具等を処分してはいけません。
まず,「家賃を滞納した」,「借主と連絡がとれない」だけですぐに契約を解除できるわけではありません。賃料の未払の項で書きましたが,「信頼関係が破壊される」程度に滞納額が多くなった,音信不通の期間が長くなった場合に,ようやく契約の解除が認められます。
しかし,契約の解除が認められても,借主には当該物件の「占有権」(当該物件を占有使用してきたという実績を保護する権利,不法占拠であっても認められます)がありますし,家財道具についてはあくまで借主の所有物です。
所有者である大家であっても当該物件を「占有」している借主の承諾なしに立ち入ると,住居侵入となる場合がありますし,所有者である借主の承諾なしに家財道具を処分すると窃盗罪や器物損壊罪となる場合があるのです。
したがって,借主と話し合って自発的に出て行ってもらうか,それでも出ていかない場合には,法的に適切な手続を踏み,裁判所の強制執行手続により立ち退いてもらう必要があります。
② 原状回復
賃貸借契約が終了した場合,借主は,当該物件を「原状に回復」して返還する義務があります。
原状回復」とは,借りた時の状態に戻すことであり,借主が運び入れた家財道具等は全部ひき払わないといけませんし,障子が破れたりしていたら元に戻さないといけません。
しかし,なんでもかんでも借りた時の状態に戻さないといけないわけではなく,通常生活している中でやむを得ない経年劣化等については戻す必要はありません。
例えば,壁紙に子どもが落書きしてしまったような場合は,落書きを消す必要がありますが,長年暮らしたことにより,借りた当時より黄ばんでしまったというような経年変化については回復する必要はありません。
退去時に,経年変化以外の損耗がないにも関わらず,家主が壁紙や畳の張り替えを行い,かかった費用を敷金から差し引いて敷金を一部しか返還しないというようなことがありますが,家主が負担すべき費用であり,借主は敷金全額の返還を求めることができます。
3,土地境界トラブル
隣接する土地の所有者間で,土地の境界線が問題となることがあります。
現実の土地の上には,境界がどこであるとの線が引いてあるわけではないので,昔設置した境界を示す目印が滅失したり,一方が植えた生垣が成長することにより他方の所有土地に入り込んだりして,土地の境界に関して問題となることがあります。
(1)土地の境界とは
日本の土地は,すべて,法務局の登記簿に登録されています。
法務局には,各土地の地番や所有者,面積等が登録されており,各土地の位置関係も公図という地図により把握されています。
したがって,土地の境界は,実は,法務局において管理されている公図や登記簿によって定められた公法上の単位であり,当事者間で勝手に変更することはできないのです。
境界が不明で争いがある場合には,法務局における筆界特定手続(土地のことを1筆,2筆と数えるので,土地の境界を「筆界」といいます)や,裁判所における境界確定訴訟によって、公権的に境界を決めてもらう必要があるのです。
(2)土地の境界と所有権の境
上述の通り,土地の境界(筆界)は,公法上の単位ですが,「筆界=所有権の境」とは必ずしも限りません。
隣接するA地とB地があった場合,筆界を境として北側のA地はaさんの土地,南側のB地はbさんの土地と「土地の境界=所有権の境」となるのが普通です(図1)。
しかし,法律上,土地についても時効取得という制度が認められており,場合によっては「土地の境界≠所有権の境」となる場合があるのでややこしいことになります。
時効取得とは,他人の所有物であっても,自己のものとして継続して占有し続ければ,所有権を取得するという制度です。
aさんがA地に家を建てる際に,筆界を超えて,B地の一部(B①地)にまたがるかたちで建物を建て,長期間住み続けると,aさんはB地の一部(B①地)を時効取得できるので,B①地はaさんの所有となります。
そうなると,bさんは,B地のうち,B①地の所有権を失うので,B地の残りの部分(B②地)のみの所有者となります。
このような場合,土地の境界は,A地とB地(B①地)の境界ですが,所有権の境は,B①地とB②地の境界部分となるのです(図2)。
登記簿上の記録と所有権者が異なることになるので,このような場合には,法務局において,B地の分筆手続(登記簿上,B地をB①地とB②地のふたつに分ける手続)を行い,B①地の所有者をaさんに変更すればよいのです。
そうすると,土地の境界はA地とB①地,B①地とB②地の2か所となり,aさんはA地とB①地の所有者,bさんはB②地の所有者なので,「B①地とB②地の境=所有権の境=土地の境界」となります(図3)。
その後,A地とB①地を合筆手続(A地とB①地をまとめてひとつの土地にする手続,ただし,合筆できない場合もあります)すれば,きれいにまとまることになります(図4)。
なお,筆界と所有権の境のずれが小さい場合や,法務局にある公図の筆界が間違っている場合には,地図訂正により,「筆界=所有権の境」に訂正できる場合もあります。
現実の土地の上には,境界がどこであるとの線が引いてあるわけではないので,昔設置した境界を示す目印が滅失したり,一方が植えた生垣が成長することにより他方の所有土地に入り込んだりして,土地の境界に関して問題となることがあります。
(1)土地の境界とは
日本の土地は,すべて,法務局の登記簿に登録されています。
法務局には,各土地の地番や所有者,面積等が登録されており,各土地の位置関係も公図という地図により把握されています。
したがって,土地の境界は,実は,法務局において管理されている公図や登記簿によって定められた公法上の単位であり,当事者間で勝手に変更することはできないのです。
境界が不明で争いがある場合には,法務局における筆界特定手続(土地のことを1筆,2筆と数えるので,土地の境界を「筆界」といいます)や,裁判所における境界確定訴訟によって、公権的に境界を決めてもらう必要があるのです。
(2)土地の境界と所有権の境
上述の通り,土地の境界(筆界)は,公法上の単位ですが,「筆界=所有権の境」とは必ずしも限りません。
隣接するA地とB地があった場合,筆界を境として北側のA地はaさんの土地,南側のB地はbさんの土地と「土地の境界=所有権の境」となるのが普通です(図1)。
時効取得とは,他人の所有物であっても,自己のものとして継続して占有し続ければ,所有権を取得するという制度です。
aさんがA地に家を建てる際に,筆界を超えて,B地の一部(B①地)にまたがるかたちで建物を建て,長期間住み続けると,aさんはB地の一部(B①地)を時効取得できるので,B①地はaさんの所有となります。
そうなると,bさんは,B地のうち,B①地の所有権を失うので,B地の残りの部分(B②地)のみの所有者となります。
このような場合,土地の境界は,A地とB地(B①地)の境界ですが,所有権の境は,B①地とB②地の境界部分となるのです(図2)。
登記簿上の記録と所有権者が異なることになるので,このような場合には,法務局において,B地の分筆手続(登記簿上,B地をB①地とB②地のふたつに分ける手続)を行い,B①地の所有者をaさんに変更すればよいのです。
そうすると,土地の境界はA地とB①地,B①地とB②地の2か所となり,aさんはA地とB①地の所有者,bさんはB②地の所有者なので,「B①地とB②地の境=所有権の境=土地の境界」となります(図3)。
その後,A地とB①地を合筆手続(A地とB①地をまとめてひとつの土地にする手続,ただし,合筆できない場合もあります)すれば,きれいにまとまることになります(図4)。
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